2ntブログ

隣の芝生SM雑記帳

SMを中心とした乱文です

真夏の夜のできごと

20年位前、ある地方都市で働いていました。今でも時々断りきれずに出張カンヅメにでかけます。 昔から変わらず色気も無いカンヅメ部屋ですが、夜網戸にしていると虫の音と共に涼しい風が吹き抜けていくのは、この季節の楽しみ・・・・しかし、もともとは沼地だったそうで、用心しないと蚊の餌食になります。

梅雨明け宣言が出されたにもかかわらず、陰気な雨が降ったりやんだりの蒸し暑い日・・・・1泊2日の楽しい(?)カンヅメです。その晩は平和な夜で、机の上の古式ゆかしいプッシュホン電話(受話器と電話がブタのしっぽみたいなグルグルコードでつながってるやつ)も静かにしてました。
昔だったら 「ビールでも・・・」 となったところですが、この御時勢・・・・・そういった訳にもいかず、受付の自動販売機に飲み物を買いにいくことにしました。

カンヅメ部屋は事務室の奥にあるので暗い廊下を進み、階段をおりていくと、これまた薄暗いロビー、長いすが無機質に並んでいて、あまり気持ちの良い空間ではありません。ロビーを横切り売店の前の自動販売機に向うと・・・・・ 長いすの端にステテコと爺シャツのくたびれたオヤジが・・・・・ちょっと、ギョッとします。夏の夜中にはあまり会いたくない相手かも・・・・
でも無視するわけにもいかず、一応声をかけます。
「ちょっとー、久しぶりだけどこんなとこで何やってんの?」
ステテコおやじは、ゆっくりと顔をあげると、にこりともせず 「おう・・・」とめんどくさそうに返答した。

ステテコオヤジ、今でこそ正体は知っているが、ヤツと出会ったのは、 まぎれもなくこの仕事場だった。
初めて自分にまかされた難しいばあちゃんが急変して夜中に呼び出された時のことだった。
何をすればよいのかも分からず動転した自分はばあちゃんに馬乗りになって胸を押し続けることしかできなかった・・・・・

ほどなく到着した先輩は何もせずにしばらく状況を観察してから、おもむろに「午前2時40分・・・」 と宣告し、部屋を出て行った。
「あー、終わったんだ・・・・・」 と全身から力が抜けたその時、部屋の隅に地味なポロシャツを着た中年男が立っているのに気がついた。
自分がこれまでに何回も顔をつきあわせ相談してきた家族・親族では見かけない顔だ・・・・何となく違和感はあったが、その時は事後処理に奔走しているうちに忘れてしまっていた。

それから3年の間に、このオヤジとはしばしば顔を合わせることになった。 あと1ヶ月で都会に戻ることになっていたある日、いつものように部屋の片隅に立ちすくんでいるオヤジ・・・・
今日こそは決着をつけてやる・・・・・ ずんずんとオヤジの前に歩み寄り、手をつかむと廊下に引っ張り出した。 
「アンタ、大変な状況の時に必ず部屋の隅にいるけど、親族じゃないよね・・・ 先週もいたし・・・・・もしかして葬儀屋の新手の商売方法?」

「俺は運命なんだよ・・・・」 当たり前という風におやじは答えた・・・・・初めて口を開くのを見たが、前歯は欠け、おでこも中途半端に禿げ上がり、絶対にもてないタイプ・・・・
「運命って・・・・アンタ、もしかして、しに・・・・」 思わず大きな声をだした自分の口をゴツゴツとした大きな手でさえぎると、しわがれた小声で一気にまくしたてた・・・・
「おまえにとっても俺の存在は便利なはずだ・・・・・おまえが初めて俺と会った時に上司はやけにあっさりと引き下がると思わなかったか?、俺がいるときに何がおこるかはお前が一番良く知っているはずだ・・・・・」

知らなかった・・・・・  この3年間、右も左も分からなかった自分に先輩は技術と知識を惜しげもなく与えてくれた・・・・・・・・ 
 なぜ このことは教えてくれなかったのか・・・・・・

その後、都会に戻った自分はいつのまにか「その場に居る第3者」の存在を気にしなくなっていた。荘厳な場にふさわしくきちんとしたスーツを着た紳士が居合わすようになったからなのかもしれない・・・・・
 おそらく、同僚達はロマンスグレーの紳士の存在に気が付いている・・・さらにその意味も・・・・
  しかし、どれだけくだけた話で盛り上がっても、何故か一度も話題になったことがない。 
思い切って自分から話を切り出そうとしたこともあったが、口に出すと魂が抜き取られるような不安感が胸の奥底から湧き上がってくる・・・・・

.........................................................................................................................................................


「オヤジ・・・・・今日もお迎えか? 思うんだけど、お迎えの時はもっときちんとした格好で出てきたほうが良いと思うんだけど・・・・」 
 早くこの場を立ち去りたい気持ちで、ゆっくりと移動するうちにオヤジと真正面から向き合う形となった・・・自動販売機の光に照らされて黄色く濁った目がこちらを向いている。

「俺がオマエの担当になった・・・・」
「??、 ・・・・ 今晩、この世とおさらばしなくちゃいけない・・・・・・???」 血液が逆流し、汗がふきだす・・・・・ のどのあたりで鼓動を感じる・・・・

「いや、そうじゃない・・・・」 ステテコオヤジはあまりの狼狽振りを気の毒におもったのか何時に無く強い口調で否定した。

「残り約10年を切ると担当決めることになってるんだ・・・・ 自分の担当がどんな人間かを把握しておく必要があるからな・・・・」

「10年 って・・・ぜんぜんリカバリーになってないじゃん・・・・ それに何だよ、オヤジは閻魔大王かなんかの手下なのかよ?」
オヤジは質問には答えずボソボソと続けた
「俺にも詳しい決まりごとは良く分からない・・・・ 実際、担当決まってもはずれたこともあったしな・・・ いずれにしても、オマエがまだやりたい事があるんだったら俺のテリトリーのこの場所にはもう来ないほうがいいかもな・・・・・・」

オヤジの言葉は耳に入らず、「10年・・」という響きが頭の中をぐるぐる廻っている・・・・・ 

カラカラの喉を振り絞り、オヤジに質問した
「この先10年、何をすればいい?」

「知らんな・・・・ 好きなことやりゃいいだろ・・・ 噂でしか聞いてないが、死神がとりついた人間には不思議な能力がつくらしい・・・・必死に願えば、金も名誉も性欲を満たすことも好きに出来ると・・・・・ この1晩、オマエを観察していたが、欲望に対してちょっと中途半端じゃねぇか?・・・・・ まぁ、俺みたいなヤツに説教されたくないだろうけどな・・・・」

ステテコを履いた死神はしんどそうに立ち上がるとロビーの向こうの闇に向かいゆっくりと歩き始めた・・・・  と、 立ち止まり振り返った・・・・
「オマエの時は一張羅を着てきてやるよ、長い付き合いだからな・・・・・」 そう言うとニイッと開いた唇から欠けた前歯を見せた。
  1. この記事のURL 2009/07/28(火) 23:14:17|
  2. 変譚
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

ひぇ~~~

ジェノさん、ご無沙汰しております。
これって、もちろんフィクションですよねぇ。
今日は炎天下の中クライアントに書類を届けに行きまして、少し涼んでから帰ろうと、人気のないロビーの長椅子に座って、携帯からこの日記を読んでしまったのです。
思わず、周りを見回してしまいましたよ(^_^;)
ステテコ姿の男性はいませんでしたけどね。
背筋に冷たい汗がつーーーって。
あーーー、痛いのは好物でも、怖いのは苦手ですからっ。

で、不思議な能力がついた暁には、ブタさんでもサルさんでもキジさんでも、M女さんを集めて、酒池肉林といきますか?w
それじゃぁ身がもたないということでしたら、ぜひクラシアンをご用命ください(笑)
ペンチを持って馳せ参じますw
  1. 2009/07/31(金) 01:22:03 |
  2. URL |
  3. ゆき #vEttnzO2
  4. [ 編集]

封印していたもの・・・・

ゆきさん、こんばんは
正直なところフィクション半分、実話半分 といったところでしょうか・・・・・ 
昨日、奥座敷さんから、今回のエントリーに関して「元ネタあるんですか??」と聞かれたんですが、書いたときは寝不足失神状態でほぼ自動書記状態・・・・・
後から読み直すと何か文体も整合性がとれてないですよね・・・・
・・・といった訳で自分の文書読んで今更ながら背筋が寒くなっております・・・・  
「納涼ポエマー路線」???
しかし、こんな状況でも都合の良い話(酒池肉林)に持っていくところが我ながらしょーもないです・・・
いや、実は本当かも・・・・
  1. 2009/08/01(土) 01:53:28 |
  2. URL |
  3. genomic2p #4hkfV.Mk
  4. [ 編集]

いや、私も

読んで驚いたんですよー!
ジェノさん、小説家でもいけるんじゃ?なんて。
渡〇淳一先生みたいに(笑)
医療SM小説とか、読んでみたいかもです。
それは冗談ですが(神聖なお仕事ですものね)、現場の方のお話は、なにか不思議な迫力がありますね。

えーと・・・
不思議な能力なんかつかなくっても、ジェノさんの酒池肉林ならば、いつでも馳せ参じますともっ!(おい!)
  1. 2009/08/01(土) 23:41:00 |
  2. URL |
  3. プラタナス #1bkUGJEw
  4. [ 編集]

こりゃダメだ・・・・・

プラタナスさん、こんばんは・・・
そっかー・・・、新ジャンル小説書いて一発あてますか!
んんん・・・・まずはタイトルからだな
「チーム・ばちあたりの白光・・・」 
・・・・え?、どこかで聞いたような気がする??

歌舞伎町にある飲み屋「ばちあたり」は2丁目からアナル拡張の権威、おヒデさんを招聘し世の悩める拡張マニアのためにガバガバ調教を専門に行うチーム、『チーム・ばちあたり』を結成、さらにマロ様を顧問に加えることで、驚異の拡張率+白光率を収めていた。しかしフィスト白光成功率100%だったチーム・ばちあたりが3例立て続けに拡張後にいぼ痔を起してしまうという状況に直面する。 妙齢の女性をいぼ痔にしてしまったのは実は店長の好みによる故意か、単なる偶然か・・・・・・
まったく世間の注目は集めないローカルな話題だったが、疑念を解明するため店のレジ係・キョーコは万年イボ痔で苦しみながらセルフ浣腸大好きで『カンチョーしたい相談窓口』の責任者・軍医殿に内部調査を命じる。そこへ外部から、たそがれのエロおやじ「屁理屈妄想モンスター」ジェノがやってくる。

ちょっと、怒られそうな 内容・・・・・?

今度、早速編集会議開きましょう! 
・・・・・別名、酒池肉林・・・・・・
  1. 2009/08/02(日) 22:23:02 |
  2. URL |
  3. genomic2p #4hkfV.Mk
  4. [ 編集]

愛読者友の会会員#3

ジェノさん
こんばんは

もしかして カンヅメ生活中 密かに 副業のご準備なんぞ なさってます?

拝読しながら 情景 まざまざと。。。まるで3D構成で浮かんできまする。
匂い もとい 臭い やら ちょいと煤けた感じの建物の構造までもが!!!

わたし 実は けっこうな確率で 魔界を行き来する人とも霊ともつかない存在に出くわしてまして。
数年前にも。
たぶん 五感の次の“感”が かなり強いせいかも。

「ジェノさん、ジェノさんに 憑いたお方 大事になさいませ~」

  1. 2009/08/03(月) 00:23:54 |
  2. URL |
  3. Sarah #RTPFDUqo
  4. [ 編集]

こんばんは

Sarahさん、ご記帳ありがとうございます。
今回はカンヅメを通り越して黄泉の国から帰還してきました(笑)
Sarahさん、見えちゃう人・・・なんですか・・・・
・・・とすると時空の歪みでエノさん化する原因はここにあるのかも・・・・
「憑いた方・・・・」 って、 ええっ?? 私、やっぱり憑かれてます????

  1. 2009/08/05(水) 22:46:12 |
  2. URL |
  3. genomic2p #4hkfV.Mk
  4. [ 編集]

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