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隣の芝生SM雑記帳

SMを中心とした乱文です

わたしを離さないで

著者は日本で生まれましたが5歳で英国に移住、英語が母語となっています。日本人としての記憶の原風景は著者に強い影響を与えているようですが、それは現在、私たちが生活している日本とは異なるもののようです。
このところ実用書以外、小説なるものは滅多に手にする機会がありません・・・・
そんな少ない読書体験の中で読んだのは、ノーベル賞候補といわれている世界的人気作家の方のBook1とBook2・・・・これは1回目読むのがしんどかった・・・・、3回くらい読んで、何となく分かった気もしますが、未だにその魅力は理解できていないかも・・・・有名な前衛絵画を目の前にして・・・「なんだかありがたい感じがするけど、贋作を目の前に出されてもまったく違いがわからない・・・・(汗)」 という感じでしょうか・・・・

今回挑戦したのは「わたしを離さないで」・・・・  最近映画になっていたことすら知りませんでした。
ETVで著者のインタビューをたまたま拝見し、興味を持った・・というのが動機です。
ノーベル賞候補作家さんの作品を読んだ時も同様でしたが、「もはや自分は現代小説についていけなくなっているかも・・・・」 という事にがくぜん・・・・・ 

小説は自分の知らない世界を主人公の目を通して体験する・・・という面があります。その意味では読み進むにつれて、新しい扉が開かれ、その情景をリアルに受け止めることにより共に感じ、考えることに醍醐味があります。

・・・が、たまたまなのかもしれませんし、現代小説を読むと必ずそうなってしまうのかもしれませんが、1度読了しても「なんじゃこれ?」状態なんです。 これだけ世間で話題になっているのに「訳が分からない・・・」というのは納得できない・・・、再度読み返すことになります・・・ あらすじや結末が分かっている状態で読み直すと、ようやく全体が俯瞰できるようになる・・・・
情けないですが、最近読んだ2作品はどちらもそうでした・・・

本編の後ろに書いてある「解説」を読むと「ネタバレ」に対して慎重な姿勢が窺えますが、あらすじを知ってしまってから読んだ方がむしろ味わい深いかも・・・・と感じました・・・ 自分だけ???

前置きが長くなりました・・・、千都さんには遠くおよびませんが、初の読書感想文ということで・・・

ネタバレ困るという意見に配慮し、一応「続きをよむ」で書きます
この小説に明示されていない背景を推察すると・・・・
ヒトの特徴のひとつとして、自分たちに生じた健康上のトラブルに対して、自ら修理する手段を得、その技術を急速に発展させている・・・ということがあげられます。その過程で「移植医療」の技術も急速に進歩しました。機能不全になったパーツは自動車部品と同じように交換すれば良い・・・という考えです。
臓器は無傷だが、生命は維持できない人から、臓器さえ交換できれば生きながらえることができる人への移植・・・・
これは最も単純な考え方ですが、臓器提供に伴う感情的、倫理的な問題が障壁となり、すべてが解決されてはいません・・・
腎臓などの1つあれば生きていける器官では「臓器売買」の横行が指摘されていることから臓器移植を必要としている人がいることは厳然とした事実と思われます。

小説の設定は20世紀終盤・・・遺伝子操作技術の発展によりヒトクローン作成が可能になった時代・・・
クローンをどのように作成するかには記述はありませんが、クローンのもととなる遺伝子、または細胞の提供者はホームレスだったり、食うや食わずの風俗嬢、犯罪者・・・などの社会的弱者らしいです。もしかすると、体外受精でクローン受精卵を作成した後、借り腹の女性の子宮に戻し、人間と同じような形でこの世に生まれてくるのかもしれません
いずれにしても、クローン達は生まれながらの孤児であり、自分の遺伝子が誰からコピーされたものかも分からない・・・・

・・・小説に登場する臓器提供用クローン人間は、臓器を摘出できるようになるまで、十数年間はヒトの子供と同様に育てられる・・・という設定になっています。
人工的産物のクローンは正常な腎臓や肝臓、心臓などの臓器を提供するだけの存在なので、人格や自己主張は必要ないことになりますが、この小説では感情を持ったクローンと、クローンは単なる人工物ではない人間と同じ存在なのだ・・・という信念を実現しようとした教育者のかかわりが全体の舞台背景となっています。
小説の中では人間の子供と同じように庇護され、教育を受けたクローン達は、感情豊かに育っていきます・・・・・

一時期はクローンに対する共感の念が一般人の間に広がりますが、最終的にはクローンを人間扱いすることは否定されます。
個人的な解釈では理由としては
①人間が幸福になるために作った技術、(この場合は移植医療を倫理的な問題なしにクリアーしようとするもくろみ)  を否定する思想は受け入れられなかった・・・・
②クローンを人間扱いするようになると、遺伝子操作により自分の子供を「スーパーマン」にしようとする考えが出てくるので危険である。

物語の後半で、様々なエピソードを織り込みつつ、以上の事実が明らかにされていきますが、クローンである主人公はじめ周辺の登場人物は運命から逃走することなく、それぞれに与えられた役割を淡々と受け入れています。

「30代で人間のためにあらゆる臓器を提供して役割を終える・・・・、また、臓器提供をするクローンの身の回りの世話は将来臓器提供を行うことになるクローンが介護する・・・、いつ臓器提供者として呼び出されるかは本人には分からない・・・」

過酷な設定です。
・・・・が、読後(2回目ですが・・)に沸きあがるのは、「これは全くもって自分自身の人生と同じじゃないか・・・」
クローンではない自分たちが生きている世界は自由な選択肢があるはず・・・なのに、実は理不尽を感じながらも現在居る場所で何とかやりくりしているのも事実・・・・・

著者のインタビュー記事を見ると、この小説は最初、クローンではなく、「核兵器や原子力に翻弄される主人公」を設定して書き始めたそうです・・・・が、クローンを登場させることでブレークスルーができた・・・と語っています。

今現在の日本人にとっては、人間が自然の摂理に手をつっこんだ遺伝子操作技術と原子力技術が同等に実感できるのではないかと感じます。

「一切予備知識を持たないで読んだ方が良い」
「将来の遺伝子操作医療を考える上でのテキストになるのではないか」

という書評もありましたが、自分としては??? でした。

他の方の読後感もぜひ聞いてみたいです。  次に小説読むのは1年後だろうなぁ・・・・

ほんと、最近読者サービスゼロの読みにくい内容ばかりですいません・・・・・
  こんなことばかり書いてないで、早く釣り堀り屋さん、再開しなくちゃ・・



  1. この記事のURL 2011/05/01(日) 00:44:17|
  2. ひとりごと
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

びっくり!

タイトルだけ見れば『!?、ジェノさんどうした!』って感じでしたが・・・なるほど本の題名だったのですね(^-^;


釣り堀やさん、繁盛するのお祈りしてますね(^O^)

レンタル店のわが家は予約が入ったのですが、なんせメンテナンス中で、貸し出せるのいつになるやら(^-^;

『メンテナンス失敗して貸出不能』って事態だけは避けないと・・・と気を揉んでおります(苦笑)
  1. 2011/05/01(日) 10:19:27 |
  2. URL |
  3. なつこ #rId1tC1Q
  4. [ 編集]

お久しぶりー!

なつこさん、ごぶさたしております!
確かに紛らわしいタイトルでしたねー・・・
文学好きの人の検索に万が一間違って引っかかってしまったらごめんなさいです・・・

閑古鳥の釣り堀屋が左前になってしまったら、なつこさんレンタルショップの商品棚に陳列していただこうかと思案中です・・・・
勢いで書いたので、あとから読み返すと若干気になる部分が・・・・恒例の投稿後修正をしました。
そんなにお目に留まる機会はないかと思いますが、変なこだわりですかね・・・・
  1. 2011/05/01(日) 20:15:31 |
  2. URL |
  3. genomic2p #4hkfV.Mk
  4. [ 編集]

あら。

この本 読んだかどうか。
でも この作家の本は 読んだことがあるみたいです。
作家の名前を覚えていましたから。
なんだか 雰囲気のある文ですよねぇ。
翻訳ですから 訳者によって多少違うのかもしれませんが。
せつない内容だったということは覚えているのですが、題名は忘れてしまって。

さっそく 図書館で予約しました。
  1. 2011/05/04(水) 17:33:45 |
  2. URL |
  3. 千都 #h0D/NfaY
  4. [ 編集]

5年前初版でした・・・・

読書感想文を書くのは久しぶりなんで、こっ恥ずかしいです・・・・
「わたしを離さないで」 邦語訳初版は2006年4月ということですので、おそらく千都さんは読んでいらっしゃるのではないかと思います。
いくつかネット上の書評を見ましたが、「予備知識無しに読むべし」 という意見が多かったのが意外でした。
単純にストーリーの藪の中を分け入っていく理解力が 自分に足りなかったのかも・・・・(汗)
2回目以降、前に行ったり後ろにいったり確認しながら読みなおして、ようやく書き手の素晴らしさが分かったように思います。
千都さんの感想・・・・楽しみにしています。
次回の読書は1年後ではなく、近々もう1冊読んでみようかという気になっています・・・・
  1. 2011/05/05(木) 17:51:15 |
  2. URL |
  3. genomic2p #4hkfV.Mk
  4. [ 編集]

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